何となく最近は落ち着かない雰囲気の日常で、読書力もがた落ちである。こちらが年を食ってきたこととも関係あるかも知れない。
尋常一様なデータならこっちも驚かなくなったし、山勘でこんなことだろうと予想をたくましくして、本の頭で結末を予想したりする。横着限りない。そうした状態だから、素直な初学者の感動がどうも最近は生まれにくくなっている。
それと、特に年末にあたまを痛めていたのが地域論の論文だった。これはどうやら収まって、あとは校正のためのゲラを待つばかりとなっている。出来は正直良くない。不要な引用が満ちあふれる駄作である。NPOなど自分に課した仕事を軽視するわけにはいかない。だから当然ながらこちらが最優先となった。全力であたる。しかし、大学からは地域創成研究センターの研究員という任務もいただいている。だから、研究をやめるわけにはいかない。社会的な任務に従う時間を縫って、研究は研究として遂行する。とにかく、短期間に一気に仕上げようと、一生懸命書いた。2010年はじめには、従来の論文を大幅に補筆し、改編して著作を出版することはしたが、正規の論文の発表は二年ぶりになる。
フランスの地方分権化改革の裏表を分析してきたのだが、暮も押し詰まってから、あらたに論文を打ち始めた。すっかり論点を忘れてしまっているのに気付いた。書き始めでまずつまずいて、うんうん言うことになった。論文執筆の世界をどう歩くべきかを、ほとんど全くといっていいほど身体的に忘れてしまっている。恐ろしいものだ。
あとは、何かといえば担当している授業をこなし、ミュージアムでの仕事をして、非営利団体の仕事に集中した。NPOとしては、最近は特に就活中の学生さん達のアシストを良くしている。彼ら、彼女らはエントリー・シートで苦戦中である。自己分析が不十分なまま廻りの状況に煽られて動いている面もある。だからそうしたご当人が気付きにくいことも敢えて踏み込んで指摘する。ある程度の時間を費やして、就活生の文章は注意深く読まなければならない。どうかすると就活にもまれて、自分自身の長所を見失う危険性もある。就活生に元気に人生の難関に立ち向かって欲しい。
ほとんど書ききれないほど重い課題に悪戦苦闘のまいにちだが、珍しく新しく本を仕入れて読み始める。表題の堀内さんの文献である。
本書は集英社らしいおしゃれなセンスで仕上げられている。フィンランドには昔から関心を抱いていたのだが、なかなか実感的に分からない国であった。著者の率直な評価と生活人としての違和感とは、隔たりが大きい国であるだけに貴重な情報である。大阪外国語大学(今では大阪大学の一部になってしまった)の留学生別科で教えていたこともあるが、その際にフィンランドの留学生が居た。それが80年代の初頭であるから、この国への興味も長く続いている。
私は不幸にして北欧の国々を訪れる機会をもっていなかった。
だから、実感的な留学生や社会人としての経験から描き出されたこの国の人々の生き様は、とても興味深かった。最初に著者の郷里のローカル紙に連載され、のちに新書としてまとめられたという。
この好著のでき上がり方も地域を基盤にしていて良いことだと思った。
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