2010年7月20日火曜日

大学とキャフェ

関西大学法学部に所用があり、鉄道の旅をおこなう。
7月16日朝、JR松山駅から9時過ぎの特急「しおかぜ」に乗る。梅雨が終わった。
気温が上がり始めている。
必要があって自分の文献を読み直さねばならない。車中の仕事である。京都に泊まる。
翌日、大阪府吹田市の千里山に近い関西大学に行く。今度は阪急の準急と特急を乗り継いだ。京都の西院から高槻、茨木を過ぎて淡路まで京都線である。淡路から千里山線の列車に乗り換える。京都線と千里山線の乗り換えにはかならず東側から西側へと地下連絡道を通らねばならない。40年前と変わらぬ風景である。それにしても久しぶりに京都からアクセスすると、両都市の距離が意外に大きく感じる。自転車で事が済む松山での暮らしと大きく違う。関西にいたころは京都と大阪の距離など意識したことはなかった。慣れとはおそろしい。
丘の斜面に展開している大学に向かって猛暑の中をのろのろと歩む。学園前で昼食をとらねばならない。冷房の効いた列車に長い時間乗っているうちに見事に食欲はなくなっている。ともかく…、と、カフェを探しながら緩い坂を登ってゆくが、なかなか適当な店がない。ラーメンだとか、どんぶり屋ばかりだ。ほとんど正門の直前まで行って、ようやく一つあった。入ってみる。院生らしい若い男性がしきりにコンピュータでレポートを打っている。この辺のキャフェで昼飯かなにかを食べながら、友人とこんがらかった議論をしていた何十年前と変わらぬ雰囲気だ。
もちろん当時よりこの店はうんとセンスがいいし、しゃれている。
先をせいていたからか、カメラを持っていながら、映像をとる余裕を失っていた。幸い親切なマダムで、プチパンのサンドイッチを手早く作ってくれた。アイスコーヒーといっしょにおいしくいただく。
学生街であってもやはりキャフェ文化は衰退しているのであろうか。家主の関係で、もうすぐこの店も閉めるという。開店早々なので、残念だとおかみが云う。ざっと見てもキャンパスに近いところで駅から歩いて、まともなっていうか、雰囲気のあるキャフェはここ以外に見つからなかった。残念な現象だ。誰も彼もが息せききって、走って暮らしているのかも知れない。
成績表の優の数などほんとうはどうでもいいのだ。大学人がこんなことを云うとおしかりを受けるかも知れないが、突っ張って主張したくもなる。内実のある勉強の方が大事だろうと。もっとも、どうやってそれを成し遂げると聞かれると、うーんと詰まってしまう。方法論が展開しにくい。開き直れば、万能のコツなどあるわけがない。
要務は一時間で終わる。
法科大学院がおかれている一角を通って、岩崎先生の彫像を写真に収めて、裏口から千里山駅にぶらぶらおりていった。大学の中では緑の木々と赤レンガ風の化粧タイルが対照的だ。キャンパスを出て、大学院生の頃、一時下宿していた一角を通りすぎる。デイケア・センターと看板がかかっていた。千里山の住民も老齢化しているのだろうか。この手の施設の看板が他にもいくつかあった。緑の千里山も40年ほどの間に大きく中身を変えてきたのだろう。日本全国、かくの如くかも知れぬ。こうして生きてきた私も、かくあるべしから、現状はこれこれ、しからば如何にという現実対応型に変貌である。君子でなくとも豹変せざるを得ぬ。
時間があるので、急いで岡崎の京都市美術館に向かう。ボストン美術館展である。丁度、祇園祭の宵山だったが、そっちは、晴れがましいというか、まぶしいので敬遠した。要するにこちらの精神状態がお祭りを受け付けない。
四条烏丸から地下鉄を乗り継いで、東山駅に着く。幸いロッカーがあったのでほとんど何もかも放り込む。そこからとぼとぼ歩く。午後の最高気温の頃であろう。白川をわたる頃、しまったとなる。これが第一のミス。カメラまでロッカーの中であった。東山が迫って見える。えいまあいいとあきらめて、巨大な朱塗りの鳥居の横、市美術館にたどり着く。このあたり自分の京都のイメージとは大きく違う。要するに国家権力が古都京都のイメージ作りを手伝ったのだろう。市の美術館はいやに古い建物である。券を買って中に入ると、駄目だ。高年齢層の数百人が入場制限をうけて滞留しているではないか。これが第二の大きなミス。考えてみれば当然だ。重みのある催しが極めて少ないとなると、じゃあボストンにとなる。マスコミの事前の報道も効いている。
係のひとに、買った券はいつでも使えることを確かめて、明日にすることにした。
あとは妙に気楽になってすたすた帰った。外国人の二人連れが道に迷って通行人に質問している。そんなのを何組も見た。道路案内の標識がほとんどないに等しい。
高級マンションが軒を連ね、そのフロアーはかならず高級な骨董屋である。骨董品といってもすべてぴかぴかで清潔に輝いている。宝物というとジャンク的な塊の中にこそあるというこちらには、妙にひっかかるが、まあいい。それも浮世だ。
岩崎卯一先生の彫像、政治社会学の先駆者である。  法科大学院の重厚な建物。

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